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夏休み 24

家に帰ってから、瑞斗は緊張で疲れ切り、風呂にも入らずにベッドの上でうとうとしてしまった。 大きな声に目を覚まし、あわてて飛び起きて、自分が眠っていたことに気づいたくらいだった。 大声を出していたのは東城だった。一階で、何か言っている。喧嘩している声だ。 廊下に出て耳を澄ませた。広瀬が勢田について行った後、何があったのか話さないため腹を立てているようだった。 大丈夫ですから心配いりません、と広瀬は答えていて、その態度に東城がカチンときているようだった。どこが大丈夫なんだ、瑞斗がいなかったらどうなったと思ってるんだと言っている。奴に犯られてたかもしれないだろ。 瑞斗は、階段を降りて行った。 リビングに二人が立っていた。 東城は怒りを爆発させていた。怒鳴られた広瀬は、正面に立って無表情でいる。 東城の手が広瀬に向かって伸びたので、瑞斗は「やめろよ」と思わず声を出して止めていた。「そんな大声出して、脅すなんて」 東城が振り返る。目が鋭くわずかに血走っている。ずっと抑えていた感情が沸騰して正気ではない感じもする。彼はあごをそらして瑞斗を見下した。こちらに彼の怒りが向いてきてもおかしくはなかった。 瑞斗は自分で自分をはげます。「弘一郎は、ただでさえでかいのに、そんなふうにしたら、誰だって怖いだろ」ちゃんと言わなきゃ。「普通に話せばいいだろ。ずっと仲良くやってんのに。大事な人を怒鳴るなんて、最低だよ」 東城が動いたのでひやっとして瑞斗は肩をすくめた。だが、彼は何もせず、何も言わず、瑞斗の脇を大股で歩いてリビングを出て行った。 瑞斗は息をついた。 広瀬は無言だった。東城の後ろを見もしていなかった。 しばらくして広瀬が動いた。「お茶飲む?」と彼は聞いてきた。 「いらない」と瑞斗は答えた。「弘一郎と仲直りできるの?」 広瀬はキッチンに行ってグラスに氷を入れた。棚からウィスキーの瓶を出し、どぼどぼと入れている。彼はキッチンの背もたれのない丸い椅子に座りグラスに口をつけていた。 「弘一郎、すごく心配してたんだぜ」と瑞斗は言った。 広瀬は返事をしない。 東城がイラだつのもわかる気はする。彼は自分がしたいときだけ人とコミュニケーションをとるのだ。 実はわがままで傲慢なのだ。こういうところは東城とそっくりなんだと瑞斗は気づいた。 「このまま喧嘩してていいの?」 ウィスキーを飲みほした後、広瀬は答えた。「喧嘩はしてない」と彼は言った。「東城さんが勝手に怒ってただけだ」 「そうだけど」 「そのうち、謝ってくるから」 「え」瑞斗はとまどった。「弘一郎が謝るの?」 広瀬は立ち上がり、グラスにまた氷を追加し、ウィスキーを入れている。返事をしてくれなかった。これで会話は終わりという感じだった。

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