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夏休み 25

「瑞斗、起きろ」と声がした。カーテンが開き、朝の光が部屋に眩しく入ってくる。 何時だか知らないが早い時間帯であることは確かだ。東城が立っていた。 「なんだよ」と瑞斗はシーツに顔を埋めて言う。このおっさん、いつも元気だ。 「今日は、裏の門を直すから、お前も来い」 「来いって、どこに?」 「ホームセンターだ。材料を買いに行く。起きろよ」東城が時計を示す。「後、10分で出る」そして部屋を出て行った。 干渉しないというルールはすっかり反故にされていた。自分も彼らに干渉しているから同じなのだが。 身支度をしながら瑞斗はそっとドアをあけて寝室の方を見た。 広瀬はどうしているのだろうか。 急いで下に降りたら誰もいなくて拍子抜けした。冷蔵庫から牛乳を取り出しパックから直接飲んでいると東城が降りてくる。 しばらくして広瀬も降りてきた。彼はいつもの無表情だった。二人とも昨夜の喧嘩はなかったかのようだった。東城がなにやら話しかけ、広瀬は適当に受け流している。 東城が車を出し、広瀬が隣に座った。後部座席から見ていると、車が揺れた瞬間に広瀬のシャツがずれた。 背中と首の間くらいがわずかに見える。そこには昨日まではなかったかすかに鬱血した跡がついていた。 キスマークだ、と瑞斗は思った。 あの後、二人はエッチしていたんだ。あんなに喧嘩してたのに、なんだよ。広瀬が、東城の方から謝ってくるって余裕かましてたのは、こうなるってことがわかってたからだ。『大人ってやつは』と瑞斗は唇をかんだ。心配して損した。

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