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夏休み 27

家に帰ると、さっそく裏門の作業にかかった。今ある古びた門と柵を取り外し、新しいのに付け替えるのだ。 午前中だったが、太陽がぎらついていて、少しだけでも外にいると汗がとまらなくなる。 瑞斗は冷蔵庫の2リットルの水のペットボトルを3本持ってこさせられた。1人1本だが、あっという間に飲み干してしまうだろう。 作業をしながら「暑いな」と東城が何度も言い、額から伝う汗を拭いた。 突然、ばしゃっと水が頭から降ってきた。そのままザバザバと水がかけられた。 見ると広瀬がホースから水を出し、東城の頭にかけていた。彼は頭をふり、顔から水を受けた。 「これは、気持ちいい」 それから、広瀬は、ホースを瑞斗にむけてきて、頭からかけられた。 全身びしょぬれになるが、この暑さですぐに乾きそうだ。 広瀬が自分でも頭から水を浴びている。濡れた髪や素肌にベッタリとくっつくシャツが色っぽくて、瑞斗は目をそらした。 指示通りに鉄の柵を片付けながら、「弘一郎、子どものころ、家出してたんだろ」と瑞斗は聞いた。「オバサンたちが言ってた。高校生のころ手が付けられないくらい不良で、家出したって」 東城は声をあげて笑った。「そうだな」と彼は言った。「家出っていうか、親父と喧嘩になって、帰らなかったんだ」 「学校はどうしてたんだよ?」 「その前に、退学しろって言われたんだ」と東城は答える。「お前と一緒で、高校を馘になったんだ。一カ月くらい女の家でぶらぶらしてて、それから、家に帰った」 東城が穴に棒を刺して、ぐっと体重をかける。広瀬がもう一本棒を差し出して、それも穴に埋める。二人は、慎重に棒の間の距離を測っている。 「なんで家に帰ったんだよ。そのまま家出しててもよかったんだろ」 「うーん」東城は少し考えている。「お前に言うのもなんだけどさ、俺、母親のことすごく好きなんだよ」彼は、広瀬に横棒を支えさせると、留め金をつける。「居候してた女に言われて、家に一回戻ったら、母親が家で待ってたんだ。一カ月くらいなのにすげえ痩せちゃってさ、病人みたいになってて、俺を見てずっと泣いてるんだ。俺、その時思ったんだよ。この世の中で一番愛している女をこんなふうに悲しませて、男として最低だってな」 「それで、家に戻ったんだ」 「まあな。正確には家じゃなくて岩居の叔母のマンションにだけどな」と東城は答えた。「親父が、家に戻るなら自分に頭下げろっていってきて、それだけは嫌だって言ったら岩居の叔母が空いてるマンションを提供してくれたんだ」 「ああ、あのオバサン」と瑞斗は言った。 「おかげで一生恩に着せられてるよ」と東城は言いながら笑った。 「学校は何で退学になったの?」

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