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夏休み 29

夜になって、家に客が何人か家にやってきた。見た感じ脈絡もないメンバーで、外見通りお互いに知らない様子で自己紹介をしあっている。 東城と広瀬は庭にバーベキューのセットを出している。火をおこすのは瑞斗も手伝った。 客は、広瀬の同僚というメガネの男と彼が連れてきた佳代ちゃんとみんなが呼ぶかわいらしい女性。 遅れてきたちょっと不気味な女の人は霊感があるのだと言われた。その人の夫と名乗る地味で暗い男も一緒だった。 他にも東城の中学時代からの友人というCGアーティストとその彼女や、二人の個性的な服の女性が来ている。その二人のことを東城は老舗のSMクラブの女王様だと瑞斗に紹介した。多分からかわれたんだろうと思う。彼女たちは否定も肯定もせず謎めいた笑顔を浮かべていた。 バーベキューでは、広瀬が大きな肉の塊を焼いた。ホームセンターの近所にあった肉屋で、誰がこんなにでかいのを食べるんだ、と東城は反対していたのを押し切って買っていた。広瀬は、焼いている間もしょっちゅうひっくり返したりつついたりして満足そうだった。 ミディアムくらいに焼けたら切り分けて、大きめの肉を瑞斗の皿に載せてくれる。 薄切りにした肉を佳代ちゃんがパンにはさんで美味しそうに食べていた。 野菜やじゃがいもなどはキッチンでCGアーティストとその彼女が切ってくる。変わった形に切ったりくりぬいてあったりして見た目も楽しい。 氷と水でいっぱいの大きなバケツに何本も瓶や缶が入っていて、SMの女王様二人が手際よくビールをついだり、カクテルを作ってくれた。 瑞斗にはよく冷えたレモンソーダをくれた。お酒も少しは飲めるのだが、警察関係者がいるところではだめだ、と東城に言われたので、あきらめた。まあ、それほど酒が好きというわけでもないのだ。 あらかたバーベキューが終わると、大人たちは花火を始めた。大人のくせにやけにはしゃいで大騒ぎしている。 花火をしたのは久しぶりだった。自分が小学校4年生くらいで、まだ、お母さんが家にいて、お父さんも一緒に庭でしたのだ。 その時の花火より、今日の花火はかなり派手に火花を出したり、うるさい音が鳴ったりしている。そのうち近所から苦情が来そうな、打ち上げ花火も何本も上げていた。 誰もが子どもみたいにのびのびと楽しんでいた。夜の屋外はやや涼しくなっていて、秋の気配がした。

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