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epilog

 誰かが扉をノックした。  晩餐室にいたセシルはノック音のする扉を見やった。  おそらくは、今日訪問するとの知らせがあったガストン・グレディオラス卿に違いない。  彼とヴィンセントとは従弟に当たる。凛々しいその姿は、ヴィンセントと重なるところがあった。  ――目と鼻のすぐ先にガストンが来ている。早く出なければと思うのに、けれどもセシルは、今はそれどころではなかった。  それというのも、セシルは最愛の男性、ヴィンセントの膝の上にいるからだ。  それも、彼の両腕が背中から腹部にまわっている。彼の顔を見るだけでも胸が震えて苦しいのに、こうして抱き締められ、接近されたままではセシルの心臓がもたない。脈は速さを増すばかりだ。 「ヴィン、セント……」  彼の膝の上で、セシルの華奢な身体が熱を持つ。セシルの顔は今、真っ赤に染まっているに違いない。  ガストンがやって来たから離してほしいのに、このまま抱き締めていてほしいと願っている自分もいる。彼はそんなセシルの反応が楽しいのか、さらにセシルを追い込んでいく。  今まで抱き締めているだけだった彼が少しずつ動く。薄い唇がセシルの耳朶にそっと口づけを落とすと、そのまま落ちていく。そうして首筋を吸われ、食まれた。 「っ……!」  セシルの腰がびくんと跳ねた。

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