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ティモシー・テイスラー

 ⅢⅩⅢ  剥き出しになっている木々の枝枝が張り巡っているそこはほとんど人の往来はない。隣町にあるフェイバリックの白い教会。そこは町の中というよりは、町外れに近かった。  ティモシーの元へと急ぎ、やって来たセシルは木々に囲まれた細々と佇む、白い教会の前で馭者と別れた。  セシルはひとり、先へ進む。分厚い木製の両手扉は重量がありそうなのに、しかし少し押しただけで簡単に開いた。  中は外観よりもずっと広く見える。それはおそらく、長細い窓がいくつも取り付けられているからだろう。細い柱が幾数も連なり、遙か天上でアーチ状の弧を描く。モダンな造りではあるのに、どこか懐かしい印象がある。左右には長い椅子が陳列されている。礼拝堂の中央を進めば、神々に祈りを捧げる祭壇には、すでに女性がいた。  ティモシー・テイスラーだ。  彼女は闇夜の深い黒髪を結え、白の衣装に身を包んでいる。 「よく来て下さいました。待っていたのですよ」  彼女はどうやらやって来た相手がセシルであると判ったらしい。振り向きもせずそう言うと、神に一礼してからセシルと向き合った。 「わたしの言ったことが理解できたようね」  そう言った彼女の目には怒りの炎が宿っているような気がした。  彼女はヴァンパイアを――悪魔を憎んでいるのだろうか。それもそうだろう。親が聖職者なら、それも理解できる。しかし、カールトン卿は根っからの悪魔ではない。彼は魔女に姿を変えられただけだ。彼は慈悲深い、とても優しい人なのだから……。

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