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白い教会。
ⅢⅩⅣ
ヴィンセントは目眩を起こした。それはけっして自分を焼き殺そうとしている日中の日差しのせいではない。そう言い切れるのは、彼の頭の中で涙を流し、鮮血に染まったセシルの姿が見えたからだ。
これがただの愚かな妄想ならいい。しかし、そう思えないのはなぜだろう。セシルの身に危険が迫っている。
太陽の日差しに焼かれるような熱があるというのに、ヴィンセントの身体は冷たく、凍っていく……。
「まだか、ガストン! このまま進めば白い教会が見えるはずだ! 急いでくれ!!」
急かすヴィンセントのただならぬ雰囲気に、ガストンは手綱を持ったまま、ちらりと振り向いた。
「早くって言ったって、これでもけっこうな勢いで馬を走らせているよ。いったいどうしたっていうんだ?」
「ぼくにもどういうことか判らない。だが、セシルの身にとてつもなく恐ろしいことが起きていることはたしかなんだ」
ガストンの問いに、ヴィンセントは頭を抱え、左右に首を振った。
「ヴィンセントはセシルを伴侶に選んだわ。彼の血液を吸い、同族にしたことで血よりもずっと濃い繋がりができたのでしょうね、潜在意識であの子の身に起きていることが理解できるのでしょう」
癇癪を起こし、恐怖に襲われているヴィンセントを宥め、そう言ったイブリンの目には深い悲しみが宿っている。おそらくは、彼女は今、自分が過去に冒した過ちを悔いているに違いないと、ガストンは思った。
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