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別れの時。
ⅢⅩⅨ
「ここは……」
太陽の日差しが眩しい。窓から入ってくる明るい日差しに、セシルは目を眩ませた。
一度、目を閉ざし、ふたたびゆっくりと開けていくと、そこには見慣れた暖炉が見える。ここはカールトン邸だ。そして暖炉があるこの部屋は、今やセシルの寝室と化したカールトン卿の寝室だ。
「――――」
それにしても、自分はなぜここにいるのだろうか。セシルは自分の記憶が途中からすっぽ抜けているように思った。
しかしなぜそう思うのだろう。
「気が付いたか? 君が意識を失ってから三日も経ったよ」
セシルが首を傾げていると、不意に隣から声を掛けられた。セシルの身体が跳ねる。
「うわっ! ヴィンセント? えっ? やっ、だめ!!」
隣にいる彼を視界に入れるなり、セシルは慌てた。なにせ今は太陽がすっかり昇っている。ヴァンパイアのカールトン卿ではとてもではないがこの状況で生きていられる術はない。
――彼が死んでしまう。
セシルは太陽から彼を守るため、たくましいその身体にしがみついた。
「セシル、大胆な君は可愛いとは思うが、まずは落ち着いていいよ」
「やっ、だめっ、ヴィンセントが死んでしまう!!」
恐怖で固まった両肩を優しく包み込み宥めるカールトン卿に、しかしセシルは首を振った。
「大丈夫だ。ぼくにはもう何も起こらない」
彼は椅子から腰を上げると、パニックを起こしているセシルをベッドに戻した。
「えっ? あれっ?」
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