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ハッピーエンドとはほど遠い。
「ああ、ダイモン!!」
もはや二人の間に入る隙もない。母を泣かせ、苦しめた父親の所行は許し難い。しかし、それでもイブリンはダイモンへの慕情を抱き続け、ひたすらその想いを胸に秘めて過ごしていた。それを知っているからこそ、ヴィンセントは何も言わなかった。
彼は抱き締め合う二人に背を向ける。そうして腕の中にセシルがいることを確かめ、馬車へと戻った。イブリンとダイモンが元の鞘に戻るのは時間の問題だ。
だが、ヴィンセントは自分とセシルの間にハッピーエンドは訪れないことを知っていた。
セシルが目覚めれば、この惨劇が全て終わる。――いや、自分に至っては始まったばかりなのかもしれない。なにせ愛おしい彼が自分の手の中からいなくなるのだから……。
それでもヴィンセントは彼を手放さねばならない。セシルの幸せを考えれば、それが一番なのだ。
胸が引き裂かれるように痛むのは仕方がない。だって、自分は彼を愛しているとまざまざと思い知ったばかりなのだ。
ヴィンセントはセシルとの別れが着実に迫っていることを悟っていた。
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