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プレゼント。

「でも、あの。これをお渡ししたら、ご迷惑でしょうか」  おずおずと尋ねると、彼女は静かに首を振った。 「貴方にプレゼントされて喜ばない人間はいないわ。セシルはヴィンセントが好き?」 「はい! あ……いえ、違うんです。ヴィンセントは化け物のような髪色と目をした僕の面倒を見てくださるから――だから……」  自分のような者が彼を想うなんておこがましいにも程がある。強く頷いてしまったセシルは、はっとした。だから頷いた直後に彼への好意は慕情ではなく、敬愛だと慌てて言い直した。  セシルは懸命に首を振るものの、けれどもイブリンは、セシルがカールトン卿に想いを寄せていることを知っているようだ。彼女の唇が弧を描いた。 「ああ、セシル。自分のことを化け物だなんて悲しいことを言わないで。貴方はとても優しくて可愛らしい子よ」  イブリンは頭を振り、セシルの頬を撫でた。  そして彼女は続ける。 「ねぇ、セシル聞いてちょうだい。――ヴィンセントはね、とても悲しい子なの。わたしの愚かな自己満足でこの世界に生を受けてしまったわ。それでもわたしはあの子と、そして夫だった彼を愛しているし、今もそれは変わらないわ。――ヴィンセントはこんなわたしを母親に選んで生まれてきてくれた。だから、あの子には幸せになってほしいの」  彼女の視線は遙か遠くを見つめている。表情はくもり、はしばみ色の目は哀愁を帯びていた。

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