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せめてもう少し。

 彼女の言葉は本当だろうか。  もし、セシルがカールトン卿にこの恋心を打ち明けたら、彼は快く受け入れてくれるだろうか。  そうだったら嬉しい。 (――ううん、そんなことは絶対にない)  自分はこんなにも浅ましく、醜い存在なのだから……。  それでもこのショースは――せめてこのショースだけは受け取ってほしい。カールトン卿を想い、編んだものだから……。  ――ああ、でも。万が一にでも彼の心に決まった人がいれば大変だ。このショースのせいでその女性に誤解されて困るのはカールトン卿だ。  そこで、ある女性の影がセシルの脳裏に過ぎった。セシルが攫われたあの当時の記憶。カールトン卿とガストンが言った、『彼女』のことだ。  果たして、『彼女』とは誰のことだろうか。  イブリンはおそらく、その女性を知っている。イブリンの口から、『彼女』についての話題が上がらないのが何よりの証拠だ。 「あの、イブリン……」 「何かしら?」 (『彼女』って誰のこと?)  脳裏に過ぎった疑問を尋ねようと口を開いたセシルは、けれども首を傾げるイブリンを見るとそれっきり何も言えなくなってしまった。 「いいえ、なんでも……」  セシルは小さく首を振った。 (――やっぱり聞けない)  もし、その女性がカールトン卿の恋人で、結婚の約束を交わしていたなら――。自分はたちまち二人の邪魔者に成り下がる。そうなれば、カールトン卿の元から早急に立ち去らねばならない。

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