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あの、やっぱりいいです。

 緊張で小さかった声は、より萎んでいく。やはり初めて作ったものを好きな人に渡すのは早まった考えだった。  だって彼なら、今流行りのショースなんかは女性に山ほどプレゼントされているだろう。  カールトン卿はとても優しい。相手がどのような容姿をしていたとしても、どんなに出来映えが悪かろうとも手間暇かけて編んだものは微笑んで受け取ってくれるに違いない。  ともすれば、こんな編み目が揃っていないものを渡しては、彼が身に着けた時に他の貴族たちに馬鹿にされてしまう。それはあまりにもカールトン卿が可哀相だ。  ――自分が愚かだったのだ。本当は迷惑かもしれないのに、彼なら喜んで貰えると勝手に期待してしまったのだから。  押しつけがましいプレゼントなんて必要としていない。  床を見続けているセシルの目からは涙が溢れてくる。 「あの、やっぱり。いいですっ! ごめんなさい、誰か別の人に使って頂きます……」  セシルは慌てて差し出したその手を引っ込めた。すると彼の手が伸びてきて、茶褐色のその包みを掴んだ。袋の中に入っているショースは彼の方へとふたたび引き戻される。 「だが、君はぼくのために編んでくれたんだろう、違うかい?」  その声は怯えるセシルを包み込むようだった。優しい声音がそっと尋ねた。

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