137 / 241
どう足掻いても。
「……はい。いえ! いいんです!!」
セシルは頷きかけたが、はっとして大きく首を横に振る。同時に視界の端で涙が散っていくのが見えた。
唇を噛みしめていると、セシルの頭にふんわりと大きな手が乗った。
恐る恐る顔を上げると、彼は目を細め、微笑を浮かべている。
「ありがとう。嬉しいよ」
彼の笑みは絶大だ。悲しみで痛むセシルの胸をあたためる。心に宿った慕情はさらに大きく膨れ上がっていく……。
カールトン卿とこうしているだけなのに、身体が熱い。蕩けてなくなってしまいそうだ。
ああ、やはり自分はどう足掻いたってカールトン卿のことが好きなのだ。
彼への慕情を再確認したセシルはこの時、既に止められないところまできていることを、本人はまだ気付いていなかった。
ともだちにシェアしよう!