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不幸に導いた張本人。

 イブリンのぼやきを無視して、書斎で書き物をしていたヴィンセントは何も答えることなく、ひたすら羊皮紙の上でペンを動かし続けた。  いつだって理にかなったことしか口にしないイブリンのお小言にはいい加減うんざりだ。なぜなら、イブリンほど利口で優しく、愛に満ちた女性はいない。自分では彼女には勝てないのだ。 「逃げるのはおやめなさい。そしてセシルに何もかもを話しなさい。貴方に対するセシルの気持ちはもう判っているのでしょう?」  沈黙が続く中、ふたたび大きなため息をつき、彼女はそう言った。  そんなことはできない。  もし、彼女の言うとおりにすれば、セシルは必ず自分を恨むだろう。  あの純粋で可愛らしい大きな目が憎悪へと変わり、自分を見るのだ。  そのような出来事なんて考えたくもない。  だったら自分の正体を悟られず、このまま当たり障りのないよう、すれ違いの暮らしを続ける方がよっぽどいい。  セシルのことは、イブリンに任せていれば間違いはまず起きないだろう。きっと何とかしてくれる。そう思うのに、セシルを悲しませていると思うと胸の詰まる思いがする。 「ぼくはセシルを不幸に招いた張本人だ。彼の気持ちを受け入れることはできない」  しばらくの沈黙を守っていた後、ヴィンセントはようやく引き結んだ唇を開いた。 「でも、それは仕方が無かった事よ。あの子を助けるためだったんだから。それはあの子のご両親だって承諾したわ」 「しかし、母上、ぼくは……」

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