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突然の来訪者。

 だったら、この女性はいったい誰だろう。 「こ、んにちは」  自分とは関係のない赤の他人に初めて声を掛けられ、セシルは戸惑いを隠せない。  恐る恐る挨拶を返すと、彼女はふっくらとした赤い唇に笑みを作った。 「わたしはティモシー。ティモシー・テイスラー。貴方は、セシル・ハーキュリーズさん?」 「そうですけど……」  見ず知らずのこの女性がなぜ、自分の名を知っているのだろう。不信に思い、一歩下がると、彼女はセシルの警戒に気付いたらしい。慌てた素振りを見せた。 「あの、ごめんなさい。怪しい者ではないの。父が、隣村のフェイバリックという教会の神父をしていて、わたしはそのお手伝いをしているの。ほんの数日前に教会で貴方のご家庭のことを小耳に挟んで、気になったのでつい、話しかけてしまってごめんなさい……」  視線を落とし、そう言った彼女は唇を閉ざした。そうして舌を出して赤い唇をなぞって湿らせる。ふたたび口を開いた。 「……あの、こんなことを初対面の人に言うのはどうかと思うのだけれど、この屋敷からは早々に手を引いた方が良いわ」  彼女の目がセシルの姿を写し出す。 「どうしてそんなことを仰るのか、僕にはよく判りません」  セシルは初対面の彼女の言い分に、ますます警戒の色を強めた。 「実は――この屋敷の主人はヴァンパイアなのよ。わたしはエクソシストを生業にしているの。できることなら貴方を奴の手から助けたいと思って、それで声を掛けたの」

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