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どうしてそんなことを言うの?
「何を仰っておられるのか、意味が判りません」
カールトン卿がヴァンパイアだって?
彼女の言っている意味が理解できない。セシルは唇を噛みしめ、彼女に尋ね返した。
「……ごめんなさい。失礼は承知の上で、貴方の身の上を調べました。貴方は男性であるにもかかわらず、彼は許嫁にしたわよね。その意味は貴方を永遠の食材にするためだったの。ヴィンセント・カールトンはヴァンパイアよ。彼の目的は血族を増やし、永遠に血液を吸い続けることができる媒体を生み出すことにあるのよ。だから彼は孤独な貴方を選んだの。貴方はヴァンパイアになりかけているわ」
たしかに、自分と彼は同性だ。この世の中では同性と婚姻する制度はなく、政府に知られてしまえば死刑にもなりかねる大罪だ。だから彼が自分と結婚を言い交わすのにはかなりのリスクがあるし、何よりも不自然すぎる。
だからといって、彼がヴァンパイアだとなぜそんな恐ろしいことが言えるのだろうか。
第一、この世の中にヴァンパイアがいること自体、おかしな話だ。まるでゲーテの劇作に出てくる登場人物のようではないか。そんなものがこの現実世界に存在するなんて有り得ない。
「そんな……そんなこと、信じられません」
セシルは首を振る。
「じゃあ、訊くけれど、彼が日中に姿を現したところを貴方は見たことがあって?」
一向に首を縦に振らないセシルに、女性は尚もセシルに噛みついた。
「――――」
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