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彼女の意図。
「でも、僕をゆっくりヴァンパイアに変えるなんて、いったい、どうやって……」
「聞くところによると、貴方は昔から身体が弱いそうね。薬だと言われてカプセルか液体を飲まされているのではなくて?」
「それは……」
図星だった。
彼から与えられている薬は、もうずっと昔から飲み慣れたものだ。しかし、それは病気を治すために処方されたものだ。両親だってそう言っていた。
「おそらくその薬の中に、ヴァンパイアの力を抑える抑制剤と、それから不必要に他人から血液を摂取しないよう、彼自身の血液が入っているでしょう」
「……そんな……」
「信じられない気持ちも判るわ。ヴァンパイアだなんてお芝居に出てくるものだから。でも、これは真実よ。いつだっていいわ、フェイバリックの白い屋根の教会を訪ねてきなさい。きっと貴方の力になるわ」
彼女はそう言うと、背を向けて去っていった。セシルは、ただただ去っていく彼女の背中を見つめ続ける。絶望と悲しみを抱え、その場に立ち尽くすばかりだ。
――彼はヴァンパイアで、孤立したセシルを食事の材料とするため同族にした。見知らぬ女性に告げられた言葉が頭の中で回り続ける。
彼がヴァンパイアだなんて考えられない。きっとあの女性は思い違いをしているだけだ。
だってカールトン卿はとても優しい、慈愛に満ちた男性だ。その男性があろうことかヴァンパイアだなんていったい誰が信じることができるだろう。
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