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肯定。

「母上が教えたのか?」  ヴィンセントがふたたび尋ねる。けれどもセシルは、やはり何も答えなかった。 「答えて!!」  その声は叫び声に近い。悲痛な声に、これまで正体をひた隠しにしてきたヴィンセントの胸が締め付けられた。 「――ああ、そうだ」 「そして僕もヴァンパイアにしたんですか?」  ヴィンセントが頷くと、彼はまた尋ねる。  この質問はとてもではないが答えにくい。無言のままでいると、それを肯定だと取ったらしいセシルは、また次の質問に移った。 「この髪と目はヴァンパイアの証拠なんだ……」  しかしそれは質問というよりは、自分に言い聞かせるようなものに近い。ヒステリックになりかけているその声が、ヴィンセントの良心をさらに痛め付ける。 「貴方の食事は血液? それ以外は……」 「食べない」  セシルの言葉にヴィンセントは間を待たず、答えた。 「ヴァンパイアになった僕は太陽に焼かれる以外、死ねないんですか?」 「そうだ」 「太陽も、いつかは見られなくなる?」  これでいったい何度目の質問だろう。ヴィンセントは長い年月を掛けて拷問に耐えているような気分だった。  そこでようやくセシルは、柩の中にいるヴィンセントを目の中に入れた。視線が絡み合えば、悲しみと苦しみ。それらが伝わってくる。 「あと数ヶ月もすれば君はぼくと同じになる。いいか? くれぐれも太陽の下に出て焼かれようなどと愚かなことを考えるな」  ヴィンセントは胸の詰まる思いに息もできない。おかげでセシルを突き放すような強い口調になった。

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