164 / 241
裏切りと悲しみ。
それは両親がこの世を去った時も、ビオラやロゼッタにいじめられた時でさえも感じたことのない感情だったからだ。
「彼がヴァンパイアだということです!」
セシルがそこまで言った時、彼女の息を飲む音が聞こえた。そこでセシルはすべてを確信した。イブリンはすべてを知った上で自分をこの家に住まわせたのだ。
彼女の優しさはセシルを想ってではなく、我が子の食料のためにしたことだったのだ。
それもそうだ。だって自分はこんなにも醜く、汚い。理由もなく受け入れられるわけがない。彼女たちを信じた自分が愚かだったのだ。
「もう、放って置いて! 僕をひとりにして!!」
イブリンを部屋から追い出すと、セシルはふたたびベッドに倒れ込み、むせび泣いた。
ともだちにシェアしよう!