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叶わない想い。

 カールトン卿やイブリンにはとても世話になった。血の繋がりもない赤の他人の自分を思いやりの心で接してくれた。そんな心優しいイブリンとカールトン卿に恩返しがしたい。  そのためならなんだってする。  だって、あのハーキュリーズ家にいた頃は悲惨だった。  未来が見えず、幸せとは無縁の生活を虐げられ、あの屋敷にいればきっと自分はあのまま病に冒され、死に逝く運命だったに違いない。  けれども社交パーティーのあの晩――。  セシルはカールトン卿と出会った。  まるで夢のようなダンスをして、明くる日にはハーキュリーズ家から連れ出してもらった。  物心がついてから、あんなに平穏を感じたことなんて一度もない。セシルは両親が生きていたあの頃と同じ幸せを感じることができた。  そして、恋を知った。  たとえ想われていなくても、それでもカールトン卿には大切にしてくれたことには変わりない。誰よりも心優しい彼は闇を生きるヴァンパイアにされてしまった。 カールトン卿には――好きな人にはずっと笑っていてほしい。  心穏やかに過ごしてほしい。  だってこの世で唯一、セシルが愛した人だから……。  ならば自分はどう動くべきか。  そこでカールトン家の真実を知ったセシルの脳裏に過ぎったのは、先日出会ったティモシーという女性だった。  ティモシー・テイスラー。彼女はエクソシストだと言っていた。  ならば彼女なら、彼に掛けられた呪いを解く方法を知っているだろうか。 (きっと上手くいく)  セシルはなぜか核心が持てた。  カールトン卿に掛けられた呪いが解かれれば、もう自分は用済みだ。食料を捕獲する必要もない。  そうして彼は晴れて醜い自分から解放され、美しい女性と添い遂げられる。

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