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それでも僕は――。

 自分の恋はけっして叶わない。そんなことはもう知っている。  だったら彼が幸せになれる方法を探そう。  好きな人だからこそ、ずっと笑っていてほしい。  お金も、権力も、地位も。何もない自分が果たしてどこまでできるだろう。判らないけれど、やってみよう。 「ここからだと遠いですが、どうかフェイバリックの教会へお願いします」  カールトン邸から隣村の教会へ。目的地を変えてセシルが馭者に伝えると、彼は快く頷いてくれた。  セシルは背もたれに身を預け、強く目をつむる。  カールトン卿にかけられた呪いを解こう。  心の中で固く決意した。

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