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ひとつの危険性。
――ああ、なぜ自分は魔女とセシルが接触するという危険性を考慮しなかったのだろうか。
胃がむかつく。ヴィンセントは込み上げてくる吐き気に胸元を押さえ、呻いた。
「それで、伯母上と会った時間はいつだ?」
「今から四時間も前だ」
なんとか吐き気を堪え、ヴィンセントが尋ねると、ガストンが答えた。
グレディオラス邸からこの屋敷までどんなにゆっくり馬車を走らせても二時間で戻ってこられる。しかし四時間経った今も彼の姿が見えないともすれば、やはりセシルはこの屋敷から離れ、いずこかへ行った可能性が高い。
「くそっ!」
なんとも言えないやるせなさに、ヴィンセントは舌打ちをする。
これから自分はどうすればいいのか、朦朧とする意識の中で必死に考えをまとめあげようとしているのに、ちっともいい案が浮かばない。ヴィンセントは呻き声を上げ、役立たずな自分を叱咤する。声を荒げて自分を罵った。
「まあ、ガストン!」
その時だ。彼の背後からイブリンが声を掛けた。そしてヴィンセントの隣に立つと、彼女はヴィンセントの顔色がほんの数分前よりもずっと悪くなっているに気が付いた。
「ヴィンセント、貴方はもう限界じゃなくて?夜な夜な屋敷を抜け出して血液は頂いているようですが、貴方、ろくな人間から血液を摂取していないのでしょう?」
――ああ、頭痛がする。
従弟と同じことを言うイブリンの登場で若干の落ち着きを取り戻したヴィンセントは首を振った。
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