イブリンたちの言動から察するに、おそらく自分の顔色は恐ろしく蒼白しているに違いない。けれども今はそれに構っている暇はない。セシルが無謀なことをしでかすかもしれないのだ。事態は一刻の猶予もない。 「母上、セシルがガストンの屋敷に行ったきり戻らないんだ。彼は伯母上からぼくたちのすべてを聞き出したらしい」 　ヴィンセントは流れ出る冷や汗をそのままに、ガストンから聞いた今朝のセシルの行動をイブリンに打ち明けた。 「なんですって？」 　ヴィンセントの話に、彼女も顔面が蒼白になっていく……。 　イブリンははしばみ色のその目をこじ開け、唇を戦慄かせた。 「セシル……じゃあ、あの子はいったいどこへ？」 　ぽつりと力なく呟いたそれは、まるで空気そのものだ。それでもヴィンセントは彼女の言葉を聞き取った。そしてガストンもまた、彼女の呟きが聞こえたようだ。 「ぼくもそれが聞きたくて参りました。ヴィンセント、セシルが行きそうな場所に心当たりはないのかい？」 　ガストンが尋ねる。 「――ない」 　ヴィンセントは直ぐさま首を横に振った。 　セシルの唯一の場所はひとつ。ハーキュリーズ家だ。しかしあそこはもう、たくさんのメイドたちがいる。そこにセシルの居場所はない。それに何より、継母や義姉が屋敷に戻るのを許さないだろう。――ともすれば、やはり魔女と一緒にいる可能性が高い。けれどもヴィンセントは魔女の居場所を知らない。 （セシルはいったいどこに……） 「……セシル」