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二重の呪い。
「……すまない。すべてはぼくの過ちだ。彼は、君に掛けられたもうひとつの呪いのことを知り、自ら命を絶った。最後まで君に謝っていたよ」
『もうひとつの呪い』ヴィンセントには二重の呪いがかけられていた。
ひとつはヴァンパイアに姿を変えられたこと――そしてもうひとつ。ヴィンセントが許嫁を決めた相手と一生を添い遂げるというものだった。
(ああ、なんということだろう!)
ふたつめのそれを、彼が知ってしまった。
おそらくは彼のことだ。ヴィンセントと一生を添い遂げることに罪悪感を抱いたに違いない。だからヴィンセントは何があってもセシルには絶対に知られないよう禁じてきた。彼がふたつめの呪いを知れば、きっと自分を責めるに違いないとそう思ったからだ。
「ばかな……。謝るのはぼくの方だ。セシル、セシル!!」
大切にしたいと思っていた可愛いセシル。その彼を、自分のためにみすみす見殺しにしてしまった。
――絶望と虚無感。
セシルを失ったことで、ヴィンセントの心にいっそうの闇が訪れる。刃を受けたのはセシルの方なのに、自分の胸にも鋭い痛みが走る。それはヴィンセントがずっと深いところでセシルを想っていたということを知った瞬間だった。ヴィンセントにとって、彼こそがただひとりの最愛の人だったのだ。
失ってからまざまざと思い知らされる事実に、ヴィンセントの心は散り散りに乱れ、悲しみに打ちひしがれる。こんな結末をいったい誰が予測できただろう。こんなことになるのなら、もっと大切にしてやるべきだった。
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