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誤った選択。
父、ダイモンにとって、妻であるティモシーへの感情は愛ではなく、偽善のようなものだったとしたら――。
それを知らず、気付かないままにティモシーと契りを交わし、結婚してしまったならば――。
そしてイブリンと出会い、本当の愛を見つけてしまったなら――。
ダイモンは自分の心を欺くことができず、一夜を共にした。そして運が悪いことに、イブリンのお腹の中に自分が宿った。
魔女であるティモシーに最愛の女性とその子供を傷付けられたくなくて、自ら身を引いたのだろう父、ダイモン。そして、いくら命を救うためとはいえ、人間からヴァンパイアに変えたセシルを愛してしまったヴィンセント。
ふたりの立場こそ違いはあっても、それらは似ていると、ヴィンセントは思った。しかし自分たちは間違った選択をしてしまった。自分を犠牲にするという手段は、もっとも大切に想っている人を不幸にしていたのだ。
「どんなに愛してはいけないと理性では判っていても、心は、自分の感情はどうにもならない……」
ヴィンセントはセシルを見下ろし、微笑を浮かべる。その顔には疲労感が漂っていた。
「母上、申し訳ありません。ぼくは……セシルと共にこの世界から去ることをお許しください」
ヴィンセントは次にイブリンと向き合った。彼女に深く一礼をする。
「……ええ、そうね。好いた人と一緒になるのが一番いいわ。さようなら、愛しい子」
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