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祈り。

 もし、セシルが助からず、ヴィンセントだけが生き残ったとするならば彼は大いに落胆するだろうし、誰よりも責任感が強い従兄は自殺を考えるかもしれない。    ヴァンパイアへと姿を変えられ、時間さえも止められた可哀相な義兄――。  長年にわたる呪いが解かれ、これからという時に、この結末はあまりにも残酷だ。  ガストンは祈るような気持ちでもう一度ヴィンセントを揺らした。その瞬間、彼の息が止まる。ガストンは自分の目を疑った。  セシルの赤だった髪の色が、ここへきてブロンドに変化しているではないか。魔女は彼の姿すらも人間へと戻したことに間違いはなかった。  ガストンはどんなに些細な動きも見過ごすまいと、すっかり元どおりになったセシルを見守る。しかし、セシルからは反応がなかった。  やはり助かったのはヴィンセントだけで、セシルは手遅れだったのか……。 「ヴィンセント? おい、頼む、起きてくれ!」  生死の狭間を彷徨い、呼び戻されたからだろうか。ガストンは、未だ若干の混乱があるように見受けられるヴィンセントに、もう一度呼びかけた。すると今度こそヴィンセントは瞼を開けた。焦点が合わないそれはやがてゆっくりと開いていく……。

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