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愚かな考え。

 もしかすると、自ら命を絶ったのはヴィンセントを助けるためではなく、自分の側にいるのが苦痛だったからなのかもしれない。セシル自らヴィンセントに唇を押しつけてきたあの時、たしかに彼から愛を垣間見た。しかしそれをヴィンセントが拒み、その結果、あらためて状況を理解したのかもしれない。なにせ、自分には許婚と永遠を生き抜くという呪いが掛けられているのだ。  ああ、自分はなんと愚かだったのだろう。セシルが化け物の自分を受け入れてくれる筈はないのに……。  ヴィンセントの心が闇に支配されていく。生きているのに、幸福感はなにひとつ得られそうにない。 「ガストンか。ぼくは……。いったい何があったんだ?」  たしか、自分はセシルが自ら命を絶った後、彼の後を追うために太陽の下で焼かれることを決意した。しかし、自分はこうして生きている。これはいったいどういうことだろうか。  ほんの少し欠如している記憶を取り戻すため、ヴィンセントは頭を振る。現状を確かめるために見下ろせば、ヴィンセントはほんの一瞬息が止まった。  これはいったいどういうことだろうか。  ヴィンセントは自分の目を疑った。心臓がいっそう早く鼓動する。腕の中にいるセシルの容姿が変化していたからだ。髪は燃えるような赤からブロンドに変わっていた。  彼は元の――いや、ヴィンセントが初めて出会った少年だった頃のままの容姿をしていた。ただ五歳のあの頃と違うのは、背もいくらか伸び、すっかり青年になっているということだけだ。

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