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ごめんなさい。
「……ごめん、なさい!」
顔を俯けようにも固定されているため、それも叶わない。セシルの目に悲しみの涙が溢れる。
だってどうしようもなかったのだ。カールトン家の誰かの命を奪えと言われても、セシルが愛している彼を悲しませる結末なんて選べない。――ともすれば、犠牲になるのはただ一人。カールトン家とは何の関わりもない、彼と許婚を交わした自分しかいない。
それにもし、呪いが解けたその後、自由になった彼が自分ではない美しい女性と出会い、仲睦まじく愛を育んでいけばどうだろう。二人の姿を見続けるのはとてもではないが耐えられない。
なにせ自分は後に引けないくらい、彼を愛してしまっているのだから……。
この想いはけっして報われない。それを実感すると大きな目からは涙が零れる。その雫は頬を伝い、骨張った彼の手の甲に落ちた。
「僕は貴方を愛してしまいました。だから僕の命で呪いが解けるのなら、それでいいと思ったんです。貴方には自由になってほしかった。健やかに生きてほしい」
セシルは唇を噛み締める。膝に置いている拳を強く握った。
「……僕は、貴方といられて幸せでした。だからもう、それだけで十分です」
『十分だ』
そう口にしたものの、セシルの本心は違った。
彼の側にいることこそがセシルの望みだ。けれども彼の呪いは解かれた。彼を縛り付けるものは何もない。
自分はもう用済みだ。
彼を本当に想っているのなら、セシルは一刻も早くカールトン卿の元から去らなければならない。
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