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女々しい。
「どうかお幸せになってください」
カールトン卿が安心できるよう、にっこり笑ってみせようとするのに、涙が流れるばかりで少しも笑顔がつくれない。エメラルドの目からは涙ばかりが流れ落ち、挙げ句の果てには嗚咽まで飛び出す始末だ。これでは、過保護な彼はますます心配になって自分を突き放せないではないか。
胸が苦しい。セシルは痛みを訴える胸を押さえた。静かな空間に、セシルが吐き出す嗚咽ばかりが響く。
「セシル、ぼくは――」
セシルが深い悲しみの涙を流していると、カールトン卿から息を飲む音が聞こえた。彼はおそらくこう思っているに違いない。自分は同情で優しくしただけで、セシルに対して恋愛感情はないと――。
彼の薄い唇が真実を口にするため、ゆっくりと開く。
これで晴れて自分はカールトン卿に振られる。同性に恋しただけでなく、涙を浮かべて愛を告白するなんて、なんと女々しい奴だろう。どれほど彼を愛していても、この恋はけっして実らないのに……。
「――っつ」
そしてまざまざとカールトン卿への恋心を思い知った時、痛み続けたセシルの胸が限界を超えた。
これまでずっと抑制していた感情が堰を切り、溢れ出す。
紅色に戻ったその唇がひとりでに動き出した。セシルは握っていた拳を解き、カールトン卿のジレを掴んだ。
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