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拒まれた。
「違う、セシル。ぼくは!!」
苦しそうに話す彼は、本当にヴィンセント・カールトンだろうか。常に自信と威厳に満ち溢れた彼は普段とは違っていた。
「セシル、聞いてくれ。ぼくは君を心から愛している」
「うそ!」
カールトン卿の言葉に、セシルが首を振る。
「嘘なものか!!」
カールトン卿は否定した。けれどもセシルには彼の言葉を信じられるはずがない。
「だって僕は男です! 心だってこんなに醜くて……ヴィンセントの呪いが解けたことを残念がっている僕がいる。僕は――貴方の不幸を喜んでいる邪な人間なんです」
あながち、あの赤い目と髪はヴァンパイアになりかけていたからというだけではなく、本当はセシルの醜い心が影響されているのではないかと、そう思う。それほどまでに強欲な願いを自分は持っているのだ。
「君はとても美しい。それに醜いという感情はぼくを想ってくれてのものだろう? 愛している人からの独占欲は嬉しいかぎりだよ。好きだ。君を愛しているよ、セシル」
「――嘘。だって貴方は僕のキスを拒んだ!」
彼がどんなに違うと否定しても、事実はけっして変わらない。セシルが生まれてはじめて自分から口づけを乞うた時、彼は逃げた。
自分はカールトン卿に望まれていない。それを実感すると、瞼が熱くなり、また新たな涙が溢れはじめる。
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