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違うというのなら、抱いてください。

「ああ、違うんだセシル。あの時、ぼくは君に自分の正体を知られるのが怖かった。ぼくは化け物(ヴァンパイア)だ。それを君に知られて嫌われるのが怖くて、逃げてしまったんだ。ぼくは君が思っている以上に、ずっと臆病者なんだよ」 「そんなの信じられない! だって貴方はいつだって自信に満ちている優しい男性だ」  カールトン卿の言葉にセシルは尚も首を横に振った。  彼が臆病者だと、いったい誰が信じられるだろう。盗賊に攫われた時も、どんな時でもカールトン卿は危険を冒してまで自分を助けに来てくれた。セシルにとって、彼は雄々しい獅子のような男性だ。彼が臆病者だなんて到底思えない。 「……お願いです。どうか本当のことを言って。貴方は同情でぼくを側に置いているだけなんでしょう?」  彼が自分を愛しているなんて有り得ない。  だってセシルはカールトン卿に抱かれたことがない。セシルが感じる部位に触られはしたが、それっきりだ。彼が自分を前にして性的欲望をさらけ出したことがない。  ――いや、それだけじゃない。カールトン卿はセシルからの口づけだって拒んだ。優しすぎる彼の言葉はすべて上辺だけのものだと考えられる要素はたっぷりある。 「セシル――」 「――それでももし、違うというのなら……。本当に僕を愛してくれているというのなら、今すぐ僕を抱いて。貴方に愛されていると実感させてください」  セシルが願望を口にすると、カールトン卿の息が止まったように感じた。  ――ああ、やはりカールトン卿は嘘をついた。  彼はけっして自分なんかを愛していない。

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