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僕じゃない他の誰かを――。

 いくら布越しとはいえ、疼きはじめる一物をこね回されればどうしようもない。  セシルの唇からはひっきりなしに嬌声が放たれる。飲み込めなくなった唾液が口角を伝い、幾数もの筋を作って流れていく。その唾液の筋を彼の舌がゆっくりと追う。セシルの口から離れた薄い唇は首筋へと移り、鎖骨を食んだ。  彼はセシルの鎖骨を甘噛みすると思いきり吸い上げる。 「あ、ああっ!」  途端にセシルの背中に震えが走った。 「君はもう、ぼくから逃げられない」  耳孔にそっと囁きかけ、彼はセシルをベッドに押し倒した。それからセシルが着ているチュニックのボタンを外しに掛かる。ボタンがひとつ外れるごとに白い肌が外の空気に触れる。  自分を組み敷く彼を見れば、サファイアの目の奥に欲望の炎が宿っていた。  やがて上半身はあますことなく外の空気に触れた。 「やっ!」  抱いてと言い出したのは自分だ。けれども実際に抱かれるとなると話は別だ。  美しい彼の前にして、貧相な身体の自分がいるという事実に羞恥を覚える。  セシルが身体を隠そうとすると、しかし彼の方が早かった。  薄い唇が露わになったセシルの胸元に口づけを落とす。一方の胸の突起を吸い上げ、もう一方を摘み取る。  カールトン卿は思いのほかこの行為に慣れている。きっと自分以外にもこうして女性を――あるいは男性を抱いたことがあるのかもしれない。なにせ彼はとても美しい。魅了するのは造作もないだろう。  自分は初めての行為なのに、彼は違う。  そしてこれからも、彼は自分に飽きた時、『愛している』のひとつでも囁きながら、こうして誰かを抱くのかもしれない。  慣れた様子の彼に、セシルの心は散り散りになる。エメラルドの目から、大粒の涙が零れた。

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