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優しい彼。
「……ん」
セシルは興奮している気持ちを落ち着かせようと、ごくりと唾を飲み、続きを待った。
カールトン卿がセシルの身体を引っ張ると、セシルをベッドに座らせた。けれども幾度となくもたらされた快楽のおかげで座ることもままならない。ぐったりとしているセシルの身体を支えながら、彼はセシルに跨がせ、自らが下敷きになった。
彼の腕が華奢な腰を持ち上げる。それから自ら屹立した陰茎をセシルの後孔にぴったりとくっつくよう固定した。
――しかし、どうしたことか。カールトン卿はそれっきり動こうとはしない。これはいったいどういうことだろう。それに先程まで下にいたはずの自分がなぜ、彼を跨いでいるのか判らない。
「ヴィン、セント?」
セシルはカールトン卿の顔を覗き込む。しかし彼は唇を引き結んだままだ。
「セシル、君のおかげでぼくの自制心がほとんど抜け落ちている。この状態で挿入してしまえば、おそらく君の身体が持たないだろう。君自らがいいと思う頃合いでゆっくり腰を下ろしなさい。ぼくはいつまでも待つから……」
言われて思い出したのは、盗賊に攫われたあの時の事だ。セシルの後孔に無理矢理男根を突っ込まれそうになったあの時、恐怖に襲われ、泣き叫んだ。
それを思い出させたくないが為の、カールトン卿なりの優しさなのだろう。
どんな状況であっても、彼は思いやりの心を持った優しい男性だ。彼を知れば知っていくほど、セシルの慕情が膨らむばかりだ。
どうやっても自分はカールトン卿を嫌えない。セシルは胸に抱いた慕情をまざまざと思い知る。
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