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 セシルは身を起こしてスプーンを取ると、皿に乗っているリゾットを掬う。口の中に放り込もうとした瞬間、それはヴィンセントによって止められてしまった。 「無茶はするな」 「どうして? だって、ヴィンセントが作ってくださったんですから美味しいに決まってます!!」  彼の言葉を振り切って、セシルはリゾットを口にした。  たしかに芯は残っているものの、それでもカールトン卿が作ってくれたと思えば心も腹も満たされる。自分はこれほどまでに、彼に大切にされていると思うと、セシルの瞼が熱くなり、涙さえ込み上げてくる。 「美味しいです、すごく」  セシルは、まるで薔薇が咲き誇るような笑顔で微笑んだ。 「どうやら我が従兄はセシルがいないと何もできないみたいだな」  ガストンがぽつりと言うと、 「ああ、そうだな」  これに関しては流石の従兄も同感のようだ。ヴィンセントも頷いた。 「さて、お邪魔虫は退散するとしよう。セシル、首筋のそれ、他人に見せないようにしろよ」 「えっ?」  ガストンは人差し指で自身の首筋を示し、ウインクをひとつした。そのとたん、セシルの心臓が跳ねた。  だって彼が示したそこは、つい先ほどヴィンセントに甘噛みされた箇所だ。彼に噛まれたその箇所がいったいどうなっているのか。  セシルは慌てて伸ばした手で指摘されたそこを覆った。けれども愛撫の痕跡を隠すのは今さらだ。ガストンにはしっかり見られている。  おかげで心臓の鼓動は先ほどよりもずっと早くなった。

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