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完璧な男性。

 なぜだろう、鼓動が大きくなって息苦しい筈なのに、それが心地好いと思うのは――。  セシルは彼の広い胸に身を委ね、うっとりと目を閉ざした。 「君は相手を喜ばせるのが上手いね」 「えっ?」 「そうやって身を任せてくれるのはリードする側として、とても喜ばしいことだ」 「それは……貴方様がとても素敵だから……」  同性の自分でも素敵だと思うくらい、彼は完璧だった。  それに比べて自分はどうだろう。赤い髪に赤い目。そして青白い肌。骨ばかりが目立つ痩せ細った身体。これでは幽霊ではないか。 (ああ、どうして僕は自分の容姿を忘れていられたんだろう)  自分はけっしてこの男性のように美しく気高い容姿をしていないのだ。そこでセシルは自分の醜い姿を思い出し、我に返った。 「あの、あまり見ないで……」 「どうして?」 「僕の容姿は人とは違うから……。気持ち、悪いでしょう?」  頷かれるのが怖い。だからセシルは顔を俯けた。 「君の髪と目はルビーのように美しい。ただ、やはり……か」 「えっ?」  後半の言葉ががうまく聞き取れなくて見上げれば、彼の真摯な眼差しがセシルを射貫いていた。  身体が熱い。けれども逃げることができない。まるで彼という檻に捕まってしまったようだ。  すっと通った高い鼻梁に薄い唇。彼の顔がゆっくりと近づいてくる。  そうしてセシルと彼の距離がずっと近づいたことで判ったのは彼の瞳の色だ。  吸い込まれそうなほどの透き通った青。その瞳はまるでサファイアのようだ。

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