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辛く、苦しい日々。

 Ⅴ  朝の明るい日差しが目に染みる。昨夜出会ったハンサムな紳士との思いがけないダンスが頭から離れない。今朝はいつもよりずっとセシルの心は清々しかった。  しかし、心とは裏腹に身体はいつもよりずっと重い。ベッドから身を起こしただけでも全身が痛みを訴えてくるし、少し動いただけでも息切れを起こしてしまう。しかも重い瞼は勝手に下りてくる始末だ。  どうやら自分は熱があるようだ。  けれどもセシルには休む時間がない。なにせ本来ならば数人で行う屋敷の切り盛りをセシルが一手に行うのだから――。  怠い身体に鞭を打ち、幾度となく倒れ込みそうになりながら、それでもなんとか食事の用意と片付けを終わらせた。  太陽はすっかり真上に昇っている。身体が不調なおかげで普段よりもずっと要領が悪い。時刻は昼食前に差し掛かっていた。  それでもまだ一日分の仕事のうち、三分の一すらも終わっていない。セシルは咳き込みながら、次の仕事に取り掛かった。  箒で玄関ホールを掃いていると、甲高い喜々とした女性二人の声がドア越しから聞こえてきた。――そうかと思えば、彼女たちは陽気な足取りで敷居を跨いだ。 「やったわ!!」  ロゼッタが楽しそうに飛び跳ねるたび、床を掃いている埃が宙を舞う。せっかくまとめた埃が宙を舞い、自由気ままに散らばっていく。  これでまた、埃を集めるところから始めなければならない。  しかし、セシルの苦労を気にも留めない彼女はうっとりと目を閉ざし、手紙を抱き締めていた。

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