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身分の違い。

 慌てて飛び起きると、しかしそこにあるのは隙間が目立つ粗末な板張りの壁でも、少し動いただけでも軋むような薄いベッドでもない。あるのはバルコニーへと続く大きな窓と触り心地が好さそうなワイン色の分厚いカーペットに煉瓦造りの暖炉の中で焚かれているあたたかな橙色の炎。そしてキングサイズのベッドにいる彼だった。 「セシル? 支度は何もいらないよ。ぼくの母は食事を作るのが何よりの楽しみでね。君がこうしている間にも、いつ目を覚ましてもいいようにとリゾットを用意していることだろう」  突然ベッドから飛び起きたセシルに、カールトン卿は薄い唇に微笑を浮かべてそう言った。  見慣れない立派な部屋はおそらく、彼の屋敷に違いない。  ああ、恥ずかしい。自分は他人の屋敷内で大声を出してしまった。教養がない乏しい人間だと知られてしまった。セシルは羞恥心に見舞われた。顔を俯け、押し黙る。 「それに君はもう少し眠っていた方がいい。まだ体温が高い。熱があるだろう?」  そんなセシルの心情を知らない彼は、話しを続けた。彼の言葉をきっかけにして、虚ろな記憶が鮮明に蘇ってくる。  思い出したのは、彼が高熱を出した自分を気遣ってくれたこと。それから彼の屋敷に向かう途中、あまりの気持ち悪さに馬車の中でもどしたことだ。  それも、上等な彼のジュストコールの上で、だ。  ――ああ、自分はなんという粗相を犯してしまったのだろう。

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