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僕は男です!
自分とカールトン公爵は同性だ。だから婚約が成立するはずがない。セシルは一番の問題を口にした――筈なのに、カールトン卿はさして気にする様子もなく、頷いてみせた。これにはセシルの方が驚いてしまう。
「えっと……だからあの、僕は子供を産めません。ですから、この由緒ある立派なお屋敷を継ぐことができないんです」
「それならしかるべき養子を貰うのもいい。とにかく今気に掛けるべき問題はそこではないだろう」
「ですが! 僕は貴方と同性です。その……夜の営みだってできません」
――そう。これこそが問題だ。自分の身体は痩せ細り、女性のように柔らかな部分はない。あるのは彼と同じ性器だけだ。だからカールトン卿を悦ばせることができない。セシルと彼との情交をどうやっても実行できるはずもないのだ。
セシルだって年頃の男だ。そういう行為を知らないわけでもない。だから女性と肉体を交えるには自分のどこを使えばいいのかを知っているし、相手を喜ばせる場所も知っている。しかし自分とカールトン卿は同性だ。自分には彼と交える部分はない。
けれどもなぜだろう、彼が同性を抱く場面を想像してもまったく違和感がないのは……。
答えは簡単だ。彼は天使とも思えるほど美しい。
しかし、いくら彼が美しいとはいえ、無理なものは無理だし、この関係に納得する人間はまずいない。況してや彼の相手が自分のような醜い姿をしているのなら尚のことだ。
(だけどきっとカールトン卿は情を交える時も綺麗なんだろうな……)
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