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ハンサムな彼。

 薄い唇からもたらされる愛撫はとても優しく官能的に違いない。オリーブ色の健康的な肌をしたカールトン卿が、このキングサイズのベッドに横たわり、セシルと肌を重ねるそのシーンを想像すれば、身体が火照ってくる。 (僕はどうしてこんな淫らなことを考えてしまうのだろう)  十八という月日を過ごす今の今まで、セシルは他人と肌を重ねるという行為をこれっぽっちも想像したことはなかった。  ここにきて、セシルは官能を求める自分を疑った。それも、現実に存在するこの男性と情を交えるシーンを――。本人を前にして淫らな行為を想像しまった自分が何よりも恥ずかしい。  セシルは火照った顔を隠すようにして、ヴィンセントから視線を外し、俯けた。  彼の反応が気になってちらりと横目で窺えば、けれどもカールトン卿はやはりともいうべきか。にっこりと微笑むばかりだ。 「それならば問題ない。言っただろう? 君は美しいと……」  薄い唇がセシルを賞賛した。  彼の手が伸びてくる。セシルのほっそりとした顎を捉えた。そのまま顎を掬い取られれば、サファイアの目に捕らわれる。視線を重ねられ、セシルはもうどうすればいいのか判らない。  百歩譲って仮にセシルが美しいとしよう。しかしそれは二の次だ。  夜の営みは同性相手では物理的に無理だとセシルは言っているのに彼は問題ないと言い張る。  なぜ彼はそこまで頑なに自分を婚約者にしたがるのだろうか。 「セシル、ぼくはね自分に腹が立って仕方がないんだよ。君の継母のよからぬ噂はぼくの耳にまで入ってきたというのに、それを黙って見過ごしていたなんて!!」

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