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頑張って働きますっ!

 約束なんて破ってもらってかまわない。セシルがそう言っても、しかし彼は頷かなかった。  だったら仕方がない。彼が自分に嫌気が差すまで、ここで厄介になるしかない。  なにせカールトン卿は優しく、ユーモアもある。女性が放っておくわけがない。自分よりもずっと彼に相応しい人と一緒になるのが自然だ。そして彼は微笑を浮かべ、妻となるその女性の手を取って、幸せに暮らすだろう。  それを考えた時、セシルの胸に微かな痛みが走った。  しかしセシルは胸の痛みに目をつむり、意味するところを深く考えないよう努めた。そうしたのは理由を知ってしまえば後に引けなくなる気がしたからだ。  カールトン卿がセシルに飽きるその時まで、自分はしっかり働かなければ。せめて、これまで貰った薬代だけでも! 「僕、頑張って働きますから……」  セシルがようやく頷き、決意すると、しかし彼はまたもや首を振った。 「それには及ばない。この屋敷には人の出入りは殆どないから、埃もたたない。必要なら一時的に人を雇うし、君が気にすることではないよ」  ベルベットのような優しい声音がセシルを宥める。 「さあ、君は働き詰めで疲れているはずだ。ずっとこうしていてあげるから、今は何も考えずに休みなさい」 「――――」  カールトン卿は不思議な男性だ。側にいると身体が熱くなって落ち着かない気分にさせるのに、どこかほっとする。  そうしてセシルは、疲労しきった身体を休ませるという誘惑に負け、柔らかなベッドに身を任せた。

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