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老婦人。

 セシルは大きく頷くと、身を起こした。すると直ぐさま細い腕が伸びてきて、身体からずれ落ちた毛布を掛け直してくれた。 「そう、それはよかったわ。わたしはイブリン。ヴィンセントの母親なの」  やはり彼女はカールトン卿のお母上だった。自ら名乗った彼女は、相手がどのような醜い容姿をしていても対等に扱ってくれる。彼女はカールトン卿と同じで優しく、思いやりに溢れた女性だった。 「あの、ぼくは――」  セシルも名乗ろうと口を開く。けれども彼女は頷き、制した。 「知っているわ。セシルでしょう? 貴方に会える日をずっと心待ちにしていたのよ? それなのにあの子ったら全然会おうとしないじゃない? だからわたしがあの子を焚きつけて舞踏会に連れて行ったの。初めは気乗りしない様子だったけれど、パーティーが終わる頃にはすっかり楽しそうにしていたから、貴方に会ったんだとすぐに判ったわ。ほんとうにあの子ったら臆病者で困っているのよ」 「そんな、カールトン卿が臆病だなんてとんでもありません。生まれて初めてのダンスで勝手が判らず、リードしてくださいました。楽しかったのは僕の方なんです!」  美しいカールトン卿と出会い、生まれて初めてダンスをした。あの夜のことを思い出しただけでも、セシルの赤い唇からはやわらかなため息がこぼれてしまう。  カールトン卿が臆病者なら、世界中の男性すべてが臆病者になるだろう。  セシルは身を乗り出し、カールトン卿はけっして臆病者ではないということを彼女に伝えた。

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