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許婚。

「いけません! 僕のような身分の低いものがこの屋敷の主人であるカールトン卿と同じ部屋に行くなんてっ!!」  自分に相応しい場所は、せいぜい隙間風が入り込んでくる粗末なつくりの屋根裏部屋か馬小屋だ。  セシルはカールトン卿に抗議した。  ところが彼は眉を潜めるばかりだ。 「君は公爵たるぼくの許婚だ。身分は十分にある。それとも君は公爵家でも不満なのかい?」 「そんなことはっ!!」 「だったら大人しくしていなさい」  彼は自分の身体を気遣い、こうして無茶なことをするセシルに怒っている。母親が幼子を諭すようなその言葉に、セシルの胸が熱くなる。  目頭が熱を帯びる。セシルの目に、またあたたかな涙が浮かび上がった。  ーーいや、あるのはそれだけではない。胸は大きく高鳴り、完全とは言えないが、下がったはずの熱がその身体に宿っている。  カールトン卿と一緒だと、心臓がいくつあっても足りない。  こうして彼の腕の中ですっかり大人しくなったセシルは、カールトン卿によってふたたび寝室に戻されるのだった。

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