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二度目の失態。

 ――嗚咽と鼻をすする音が静かな空間に響く。  二人の時間はゆっくりと流れ、暖炉にくまれた薪が時折ぱちぱちと軽やかな音を奏でる。  セシルがようやく落ち着きを取り戻したのはそれからもう暫く経ってからのことだった。  やがて涙が引っ込み、冷静になってくると、次にセシルを襲ったのはカールトン卿に縋りついて泣いたという事実だ。羞恥がセシルを襲った。 「ご、ごめんなさいっ!」  セシルが慌てて身を引けば、二人の間に空間ができた。セシルとカールトン卿との間に空気が流れ込む。  するとセシルはもっと力強い腕に包まれていたいと思っている自分に気が付いた。  自分はいったいどうしてしまったんだろう。十八にもなって人肌が恋しいと思うなんて……。  恥ずかしい。顔が熱くなる。  けれどもいつまでも俯いてばかりいるとへんに思われてしまう。セシルがそっと視線を上げた。瞬間だった。  ――ああ、なんということだろう。セシルは言葉を失った。  身体じゅうから血の気が引いていく。  カールトン卿が着ていた立派なチュニックの胸元に大きな染みができていたからだ。その染みはセシルが彼に縋り、咽び泣いた時に付いた鼻水と涙だった。  自分はなんという失態を犯してしまったのだろうか。今やカールトン卿の立派な絹のチュニックはセシルが垂れ流した涙と鼻水がびっしりとこびり付いている。  消えてしまいたい。セシルは袖を伸ばし、カールトン卿の胸元を拭きはじめる。 「セシル? ぼくは一向に構わないよ。洗えば済むことだ」 「でも、でもでも、落ちなかったら? 僕は貴方様の大切なお召し物を汚してしまいました!」  はじめはおう吐で、その次は涙と鼻水。彼の衣装をことごとく汚している。一度ならず二度までも犯してしまった大失態に、セシルは身を強張らせた。 「セシル!」  セシルが慌てて拭いていると、彼の手が両手首を掴んだ。そうかと思えば、突然身体が引っ張られ、セシルの身体はふたたび力強い腕の中に包まれた。

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