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一通の手紙。

 Ⅸ  それからのセシルはカールトン卿とイブリンの献身的な看病によって、体調は徐々に回復していった。おかげでこの屋敷に来た当初、骨ばかりが目立っていた身体はほんの少しだが肉付き、くすんで青白かった肌は赤みが増した。何よりずっと続いていた咽ぶような咳も消え、ずっと健康的になった。  ――にも関わらず、彼らはとても心配性だった。セシルの体力はすっかり回復し、健康的になったのに、一向にベッドから下りるという行為を許してもらえない。おかげでセシルは彼らの恩返しのために使用人として働くことができず、誰よりも魅力的なイブリンの趣味に付き合うばかりだ。  カールトン卿はやはり公務で忙しく、日が昇っているうちはなかなか会えない。それでも夕食時になると必ず顔を出し、セシルの世話をあれこれ焼いてくれる。それはセシルが恥ずかしいと思えるほどに……。  二人共相変わらず優しく、とても寛容だ。セシルはここへ来てまだ数日しか経っていないのに、この暮らしにすっかり馴染みつつあった。 「まあ、たいへん」  時刻は午後六時を回っている。それは、セシルがいつものようにイブリンと一緒にキッチンで夕食の準備をしていた時のことだ。彼女は壁に掛けられた柱時計を見るなり、突然声を上げた。 「あの、いかがしましたか?」  イブリンの指示に従って彼女の隣でポトフの具材を鍋に入れ、掻き混ぜていたセシルはびっくりして顔を上げた。 「今日の昼間にね、ヴィンセント宛てに親戚のグレディオラス卿から手紙が届いていたの。あの子に渡すのをすっかり忘れていたわ。……困ったわね、返事を書かなければならないだろうし、グレディオラス卿を待たせるのはよくないわ。早くヴィンセントに渡した方がいいんでしょうけれど……でもわたしは料理の途中だし、火の側を離れられないわ」

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