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美しい庭で。
彼のことを考えただけで心臓が大きく鼓動し、身体が熱を持つ。
(だめだ、息ができない)
なにぶん、セシルは病み上がりで体力はかなり落ちている。速く歩きすぎた身体は酸素を求めて呼吸が荒くなる。赤い唇は咳が飛び出すばかりだ。
自分がこんな調子で彼に会えば、また心配させてしまう。
セシルは深い深呼吸をひとつして湧き上がる気持ちを落ち着かせると、ふたたび歩きはじめた。
――イブリンが言う東の庭の一角にようやく辿り着いたセシルだが、カールトン卿の姿はどこにも見当たらなかった。
辺りはもうすっかり暗いが、視界は良好だ。奥行きが深い庭にはところどころ青白い照明が配置されていた。
(あれはなんだろう? ひとつ、ふたつ、みっつ……)
薄闇の中、ぼんやりとした白いものが浮かび上がっている。照明のおかげで幾分か明るいものの、奥の方は目を凝らさなければ少し見えにくい。
セシルは不思議に思って、もう少しそれに近づいてみる。その瞬間、セシルは息をのんだ。
ぼんやりとした白のそれは、実は花弁で、セシルが見たそこには白い花たちが静かに咲いていたのだ。その花弁はまるで雪のようだ。照明に照らされ、どこか発光しているようにも見える。
「……綺麗」
口元に笑みが浮かぶ。セシルは視界いっぱいに広がった美しい花々を見つめ、深いため息を吐いた。
そのまま……ただただ白い花々に魅了されることしばしーー。
「気に入ったかい?」
「うわわっ!」
突然背後から声を掛けられ、セシルの心臓と身体が跳ねた。
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