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過保護②

 カールトン卿は着ていたジュストコールを脱ぐと、セシルの肩に掛けた。  しかし、そうなってはカールトン卿が寒さに凍えてしまう。自分はイブリンから与えてもらったショールがあるからあたたかい。けれど彼はジュストコールを失えば、あたたまるものが何もなくなってしまう。  セシルは肩に掛けられたジュストコールを取り、彼の分厚い胸板に突き返した。  対する彼はセシルの行為をよく思わなかったようだ。一向に首を縦に振らない。  「ぼくは平気だ。風邪なんて滅多にひかない体質なんだ」 「そんなのだめです!!」  いったい誰が、ジュストコールをなくしたカールトン卿の言葉を信じることができるだろう。季節はすっかり秋から冬へと移り変わろうとしている。あと一ヶ月もすれば十二月だ。  もし、カールトン卿が高熱を出し、倒れてしまったなら……自分はもちろん、母親のイブリンはとても悲しむ。そして誰より、一番苦しむのはカールトン卿本人だ。  自分は生まれつき病弱だ。熱を出し、倒れてしまった経験だって山ほどある。体調をくずすということがどんなに大変なことか。どんなに辛く苦しいことか。自分と同じ苦しみを彼には――カールトン卿にだけは味わってほしくない。  だからセシルは彼のジュストコールを突っぱねる。――のだが、その拍子に、セシルはあろうことかバランスを崩してしまった。 「うわわっ!」  セシルの視界が半回転する。やがてやってくるだろう衝撃に備えて固く目をつむった。体重の掛け方を間違え、硬い地面へものの見事に倒れ込む。――はずなのだが、おかしなことに痛みは一向にやってこなかった。

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