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ホワイトプリンセス。

「でも不思議です。ジャスミンって亜熱帯地域にしか咲かないと思っていたのに……」  この国で咲いたとしても、てっきり温室で育てられているものだと思っていた。だからセシルは首を傾げた。 「ああ、この花は比較的丈夫でね。日陰でも若干の日が当たる場所ならこうして綺麗に咲いてくれるんだよ」  そこでようやくカールトン卿から香ってくる匂いの正体が判明した。  彼から香るジャスミンのこれは香水でも何でもなく、純粋な花の香りだったのだ。  だからだろう。いつもなら香水の匂いで気持ち悪くなってしまうのに、彼から放たれる香りでは気分が悪くならなかったのは……。  花の香りが身体に染みついてしまうくらいだ。カールトン卿はきっと、この花を大切に育てているに違いない。 「そうなんですね。知らなかった……あの、この花はカールトン卿がお育てに?」 「ああ、母上からのたっての願いでね。ジャスミンは父上が好きだった花だそうだ」  カールトン卿のひと言でセシルははっとした。  そういえば、自分がこの屋敷で世話になってから三日以上が経つのに彼の父親の姿を見ていない。もしかすると、彼の父親も生前自分の父がそうだったように、公務で他の街に行っているのだろうか。 「お父様は、今どちらに?」 「判らない。ぼくが物心ついた時にはもういなかった。どうやら母上は父上の消息について何か知っているようなんだが、尋ねても生きているのか、死んでいるのかも教えてくれなくてね」

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