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過保護⑤

 セシルはキュロットのポケットから一通の手紙を取り出した。 「えっと、これ。ご親戚の方からのお手紙です」  カールトン卿に件の手紙を渡せば、見る見るうちに彼の眉間に皺が寄っていく。 「……差出人はグレディオラス。ガストンか。これを母上が持って行けとそう言ったのか?」 「はい」 「用件は知れている。相手が彼らなら急がなくてもよかったのに……」  そう言ったカールトン卿の口調はどこか面倒くさそうだ。彼はサファイアの目をぐるりと回した。 「でも、イブリンが急いで手紙の返事をしなきゃいけないっておっしゃっていましたよ?」  セシルが尋ねると、 「……母上……」  薄い唇から大きなため息が吐き出された。  そうすると、今度はどうしてなのか。彼の胸から伝わってくる振動がどうにもセシルをそわそわさせた。だからセシルは話題を変えることにした。 「あの、この花、ジャスミンの種類ですよね。えっと、名前はたしか、ホワイトプリンセス」  転んだことによって、セシルを魅了していたその花弁との距離がずっと近くなった。細い指先が、闇夜の中でも可憐に咲く真っ白い花弁に触れる。するとその花はセシルに反応して小さく揺れた。  なんと美しい花だろう。  けれどもたしかジャスミンは亜熱帯でしか咲かない花ではなかっただろうか。セシルが幼い頃、屋敷の庭を様ざまな草花で埋め尽くすのが好きだった母はそのようなことを言っていた。

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