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キスの余韻。
彼の力強い腕の中で華奢な身体が小刻みに震える。しかしこの震えは寒いという理由でもなければ、況してやカールトン卿に怯えているというわけでもない。
感情が高揚して身体が疼く。心臓が早鐘を打ち、カールトン卿に触れられた箇所からは次から次へと熱が生まれた。
セシルは喘ぎそうになる唇をその指で押さえながら、必死に堪えた。
「一週間後、母方の親戚が社交パーティーを開くらしい。一緒に来てくれないか?」
「ん……は、い」
果たして彼は何と言ったのか。セシルの意識はカールトン卿に与えられた深い口づけのおかげで朦朧としている。もう何も考えることができないその真っ白な頭で、セシルはふたつ返事をした。
「ありがとう。母上が心配する。中に入ろうか」
彼の手がセシルの背中を撫でる。
あんなに寒いと思っていた夜の空気が今はとても心地好い。
ふと気が付けば、イブリンが渡してくれたショールは肩から消えている。
同性からのキスを受け入れてしまうなんて自分はいったいどうしてしまったのだろう。
けれどもカールトン卿との口づけは少しも不快ではなかった。それはセシルが心の奥底で彼とのこの行為自体をずっと待ち望んでいたものだったからだ。
そしてセシルははっと息を飲む。自分の気持ちに驚きを隠せなかった。
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