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図々しいお願い。

 ⅩⅠ 「あの、カールトン卿。お願いがあります。僕に一人部屋をください」  セシルがカールトン卿に願い出たのは、明くる日の深夜のことだった。イブリンが寝室で休んでいる今、この屋敷に電気が煌々と点いているのはここ、カールトン卿の寝室のみだ。彼は今、寝室にて例の如く、皹を起こしているセシルの両手に馬油を塗ってくれていた。 「それはなぜだい?」  彼はセシルの口から飛び出した意見が気に入らないのか、眉間に深い皺を刻ませている。 「あの……年頃の男子はみんな自室を持っています。だから……僕も……」  ……なんて勝手な言い分だろう。  セシルは一人部屋が欲しい理由をカールトン卿に説明しながら、自分を責めた。  ただでさえ、カールトン卿は病弱なセシルを屋敷に招き入れ、こうして付きっきりで看病をしている。  それなのに自分はどうだろう。こうして看病してくれている恩を忘れ、部屋が欲しいと駄々をこねるなんて図々しいにも程がある。  彼は今、自分の事をなんて強欲で図々しい人間だろうと思っているに違いない。  それでも、セシルは前言を撤回しなかった。  是が非でも一人部屋が欲しかったからだ。  何がどうあってもカールトン卿には頷いてもらわねばならない。  ――けれども蔑むような彼の視線が痛い。  セシルは絶えらきれず、不機嫌になっていく彼から顔を背けた。  常に温厚なカールトン卿。彼が怒っている姿なんてこれまで一度も見たことがない。  しかし、どんなに優しい彼でも限度というものはある。  自分勝手な言い分で彼を怒らせてしまったかもしれない。そう思うと胸が痛い。彼には――カールトン家の人間にだけは嫌われたくないと思っていたから――。それでもセシルは一人部屋を願わずにはいられなかった。  けれども実は、セシルがカールトン卿に願い出た、『一人部屋が欲しい』という理由だが、事実とは異なっていた。

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